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- 翻 刻
- 現代語訳
短慮之禍、或口論之企、其外段々不宜儀
皆以一気之所致候、能々此了簡を以
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常々気持之修行入念候儀、可為肝要事、
一家中之儀、大抵拾ヶ年弐拾ヶ年之
前後ニ者、或幸事或不幸有之積候、此儀者
運数自然之次第候、然者(共)不幸打続致衰
微
候方、随分励気力、万事無油断相働候ハヽ、
何程衰微之苦差当候共、其家致再興
候儀必定之事候、又一旦盛居候共、我満
之心差挾前後之計得定(忘)却仕居候ハヽ、
衰微之憂眼前之事候、然者家中盛衰
之儀、運数自然之理与申事候得共、人々
次第右之盛衰茂変化有之積候、若
一旦之衰微付而気力を禿居候ハヽ、衰微之
上之衰微ニ候、子孫迄可及迷惑候、能々
此了簡可為専一事、
あるいは短慮による禍、あるいは口論を企てる
など、その他色々と宜しくないことは、全てこ
の一気に起因する。十分にこのことを理解し、
常日頃から気持ちの修行には念を入れることが
肝要である。
一、家中(家族)は、およそ一〇年や二〇年前
後において、幸いな事やあるいは不幸が起こる
ものである。このことは、運数(運命)におい
て自然なことである。しかしながら、不幸が打
ち続き衰退している方でも随分と気力をもって
万事について油断なく働くならば、どれほど衰
微の苦みに直面しても、その家が再興する
ことは必然のことである。他方、一度、富貴と
なって我がままな心持ちによって将来のことを
忘却していては衰微の憂いとなることは明白で
ある。それゆえ、家中の盛衰というものは、運
数として自然な理といえるが、人の働き次第で、
この盛衰は変化するものでもある。もし、一度
の衰微に気力を失うことになったなら、衰微の
上に衰微を重ねることになり、子孫にまで迷惑
を及ぼすことになる。このことを十分に理解す
ることが重要である