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  • 現代語訳


 申候得共、此儀絶而無之積候、左様之働於罷
 成ハ、
 敵人則々呪倒申筈候得共、右之働絶而
 不罷成付而、大国茂折々兵乱之憂有之
 事候、是(且)又死霊茂其念力を以人を悩
 申由候得共、是も心儘ニ不罷成積ニ候、深キ
 恨有之方世間余多可罷在候、若死霊之働
          ■
 輒於罷成者、則々恨を遂可申候得共、右之働
 不罷成ニ付而、如何成敵人茂差免置候儀、
 いつれも存知之前ニ候、然處病人之儀、依病
 症
 霊気之様乱言仕候者を致勘違、生霊・
 死霊之悩与申立候儀、甚不宜儀ニ候、右之訳
 得与致落着、随分<療治方>入念候儀可為専
 一事、
  附、依病症者往古之事相談候者も有之、
    <又文字芸能相達候者茂有之、>其外
    段々奇妙之挙動有之由、前代之
    名医被申置候、是又為納得申達候、

このことは絶対にありえない。そのような働き
が可能ならば、敵人を即座に呪い倒せる筈だが、
そのような働きは絶対にできないので、大国で
もしばしば兵乱の憂いがあるのである。
 かつまた、死霊というものはその念力で人を
悩ます(苦しめる)とのことだが、これも心の
侭に行うことはできない。深い恨みを持つもの
は、世間には数多いであろう。もし、死霊の働
きで容易に行えるなら、即座に恨みを果たせる
筈だが、それができないのでどんな敵人もそれ
を免れている。
それは皆、周知のことだ。ところが、病人は病
症によって霊気の様に乱言(妄言)する者を勘
違いし、生霊や死霊のよる悩まし(呪い)と言
い立てるのは非常に宜しくない。右の理由を十
分納得し、(病人の)治療に専念することが重要
である。
  付けたり。病症によっては往古のできごと
を語る者や、また文字(を知らない者が)や芸
能に通じる者もいる。その他、いろいろと奇妙
な挙動があるという。そのことは、前代の名医
によって指摘されている。このこともまた納得
してもらうために達しておく。
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