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- 現代語訳
不起様可有心得候、縦令諸人之内我妬候人
有之候共、我者絶而人を妬不申様、常々心中
題目之勤ニ候、此心得
致鍛錬候儀、○可為専一事、
以上拾三ヶ条者、人倫之勤申述候、
一家中之儀、不依貧富ニ睦敷取合、子孫之
者共江者別而教訓相加、何連茂正道にして
何篇無油断相勤候儀、家中之治与申事候、
縦令銀銭米穀何分貯置候共、件之
了簡無之候ハヽ、衰微之憂案中之事候、
跡々富人之家中追付及衰微候方者、
正道之治無之、財宝計貯置申故候、克々
此了簡を以家中相治候儀、可為要勤事、
一身命之儀、何之宝物よりも大切存、可致保養候、
病身罷成候而ハ何分相働度思立候共、
存儘不罷成候、然處其了簡無之、常々
身持致大形、終病気差起、後悔仕候方
揉め事が起こらないように心得るべきである。
たとえ他人の中で我れ(当人)を妬む人がいた
としても、我れ(当人)は絶対にその人を妬ま
ないように、常日頃から心中(心持ち)を鍛錬
することが大事である。この心得を第一とする
こと。
以上の十三か条は、人倫の勤めについて述べ
たものである。
一、家中(家族)というものは、貧富に関わら
ず睦まじく交わり、子や孫には特に教訓を与え
て、どの者も正道(公正)で、何事にも気を抜
かずに勤めること。そのことが家中を治めると
いうことである。たとえ銀銭米穀(などの財)
をどれほど蓄えていたとしても、
このことについての了簡(理解)がなければ、(家
中が)衰微することは必然である。以前に富貴
であった家族が次第に衰微するようになるのは
正道な治が無く、財宝ばかりを蓄えていたから
である。十分にこのことを理解して家中を治め
ることが大事な勤めである。
一、身命(生命)は、どんな宝物よりも大切な
ものと考えて保養すべきである。病気になって
はどんなに働きたいと考えても(体は)思うよ
うにならない。しかしながらそのような了簡(考
え)がなく、身体を粗末に扱い、終には病気を
患って後悔する者が多い