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  • 現代語訳

了簡無之、自分之勝手専一存、無理召仕
 候儀者、慾心之挙動甚不宜事候、如何成
 愚痴下輩之者も主人之志者可察入候、能々
 其心得可有之候、乍然憐愍を以召仕候へ共、
 主人致疎意候ハヽ、早々差替可然候、任
 怒度々打擲相加候ハヽ、却而愚痴之恨
 差起可申候、其心得可為肝要候、且又
 下人之儀、無理之主人ニ逢候共、下人之勤
 随分入精、相働候ハヽ如何成邪慾之主人茂
 感入、其憐可有之候處、右之了簡無之、却而
 恨を差起、
 態与致不勤、或逢打擲、或被召放
 候儀、畢竟下人之愚痴故候、
 右之訳得与致落着、主人茂下人茂互正道
 之勤可為肝要事、
  附、下女右同断、
一諸人取合之儀、言語之慎可入念候、無理之
 人与見及候ハヽ、弥其慎を以軽我之

そのような考えが無く、(主人の)自分勝手な一
存で酷使することは、欲深い行為であり良くな
いことだ。どんなに愚痴蒙昧な者であっても主
人の意図を察するものである。よくよくそのこ
とを心得るべきである。
 しかしながら、憐憫の心持ちで働かせても、
主人に疎意(服従しない)の者は、早々に解雇
するのが妥当である。怒りに任せてしばしば折
檻したならば、却って愚痴な恨みを抱くことに
なる。そのことを心得ることが肝要である。また、
下人は無理(非道)な主人に雇われても下人の
勤めとして
十分に精を入れて働いたならば、どんなに我欲
な主人も感心する(ようになり)、憐憫を得られ
るにようになるであろう。ところが、このよう
な考えがなく、却って(主人に対する)恨みか
ら故意に怠業したり、あるいは折檻されたり、
あるいは解雇されることは、結局、下人の愚か
さに起因するものである。以上の道理を十分に
理解・納得して主人も下人もお互いに正道(公正)
に勤めることが重要である。
 付り、下女も(下人)と同様に取り扱うこと。
一、諸人(他人)と交際する際には、言葉使い
を慎重にしなさい。無理(道理を弁えない)人
と判断したならば、特に言葉使いを慎重にして、
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