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- 現代語訳
一人間之道与申者、孝行題目ニ候、孝行与
申者諸士・百姓共其身之行跡題目にして、
家中人数其外親類縁者至迄睦敷
取合、尤御奉公人者国家之為何篇
入精、又百姓等ハ家業無油断相働、各
件之勤を以父母安心させ候儀、孝行申事候、
若行跡不宜、或家中親類縁者之取合
不睦、或御奉公ニ付而忠義之心立無之、
或家業之働致油断、ケ様之不届共有之候而ハ、
何程父母ニ衣食之類結構相備候共、父母
安心無之積候、此心得を以諸士・百姓共
孝行之勤可致執行事、
一本宗正統之嫡家者、則一門之根源ニ候、
者
一門之儀元租一人之孫々ニ而、骨肉一体之筋
候間、如何ニ茂睦敷取合、就中嫡家ハ何連も
ニ而
其取持有之儀、孝道之大本ニ候、上下共
一、人間の道と言うのは孝行が題目(重要、核心)
である。孝行と言うのは、諸士・百姓ともにそ
の身の行跡(行為、行動)を題目にして、家中
人数(家族)やその他、親類縁者に至るまで睦
じく交際すること。なお、御奉公人は国家の為
に何事にも精を入れ、また百姓等は家業を油断
無く働き、それぞれの勤めによって父母を安心
させることが孝行と言うものである。
もし行跡が悪く、あるいは家中(家族)や親
類縁者との交際(付き合い)も不仲であったり、
あるいは御奉公について忠義の心立て(心構え)
が無く、
あるいは家業の働きを油断(存在に)するなど、
この様な不届き(いい加減な)のことがあって
はどれ程、父母へ衣食などを十分に提供したと
しても、父母は安心できないであろう。このこ
とを心がけて、諸士・百姓ともに孝行の勤めを
行うべきである。
一本宗正統(本家筋)の嫡家は、即ち一門の根
源である。一門というのは元租一人(を起点と
して)孫々に至っているのであり、骨肉一体の
筋である。そのため、いかにも睦じく交際し、
取り分け嫡家に対しては、(分家、支流)のいず
れも(皆)、取持ち(処遇)することが孝道の大
本(大原則)である。上下(上の身分も下の身
分も)ともに、