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「8
アト
さあ〳〵御出家いのらせられい。すろをへました
こい〳〵ようきた〳〵。かはい犬しや。にやも〳〵〳〵。
さかいて シテ
さあ〳〵御山伏のまけて御座る。いや〳〵是ては
さかいて
知りぬそよ、いやてなたにいくいかたりまする。出
シテ
家には左様にも御座ぬ。◦いや〳〵是てはしりぬ、
アト
合祈りにしう、いや合いのりにり及ふますまいか。
シテ アト
◦いや己しをうまいか、はあいたしませう〳〵。
夫ならは。此度は。繩を切ていのりませう。
シテ
◦いや〳〵繩を切てはいやしや、其侭いのらう早ふ
さかいて
切らしられい、心得ましたそれや切たは。
シテ
いつにめつ深叱犬なるは、からすのいんのむすん
てかけいろつのものにて祈るならは、なとかきと
このなかみき、ほうろうん〳〵〳〵〳〵、
「8
(サカイテ = 仲裁者)
「さあさあ、今度は出家に祈ってもらいましょう!」
(アト = 出家)
「それでは祈りましょう。
こいこい、よく来た、かわいい犬よ。にゃもにゃも……。」
(サカイテ)
「さあさあ、これは山伏の負けですね。」
(シテ = 山伏)
「いやいや! こんなことがあるはずがない!」
(サカイテ)
「いいえ、これは明らかです。出家のほうには、そんな怪しげなことは起こりませんよ。」
(シテ = 山伏)
「いやいや、こんなの納得できない! 合わせ祈祷をしよう!」
(アト = 出家)
「いや、合わせ祈祷などする必要はないでしょう?」
(シテ = 山伏)
「いや、しないわけにはいかない!」
(アト = 出家)
「はあ、では仕方ないですね。」
(アト = 出家)
「それでは、今度は犬を繋いだ縄を切って祈りましょう。」
(シテ = 山伏)
「いやいや! 縄を切るのはやめてくれ! そのまま祈ろう。さあ早く、切らずに祈ってくれ!」
(サカイテ)
「心得ました。では、縄を切りましたよ。」
(シテ = 山伏)
「これはなんという賢い犬なのだろう……。
烏(カラス)を使って祈る者もいるが、この犬こそは真に神通力を持っているのかもしれない……。」
(再び祈り始める)
(シテ = 山伏)
「ほうろうん、ほうろうん……!」
