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- 現代語訳
「7
いやあの山伏をそうして見るに。何にす。行湛はなひ
とみ見た。又某の犬は。やせしい犬て。こなたのかそひ
からしやれたしは。何そもあるまいほとに。必いの
アト
こらせられい。夫ならは祈りませう。犬を引て
さかいて
御座れ。心得ました。さあ〳〵御山伏祈ら
シテ
せうれい。◦只今目に物を見せう、しつととらへて居よ、
さかいて シテ
心得ました。◦そられ山伏といつはッ山におきなすに
依ての山伏也。ときんとつは、布切を真黒に染むさと■
さを取ていたかたわくに依てのとれんなり、珠数玉をつ
なきあつめ、いら高の珠数と名付明有のさつ
こにかけていのるならは、なとくきとくのなりるへき
笑
ほうろうん、〳〵〳〵〳〵 犬ろう〳〵〳〵
さかいて シテ
さあ〳〵先。出家にいのらせい。◦心得ました、
「7
(アト = 出家)
「いや、あの山伏の様子を見ていると、何の力もないように見える。
それに、私の犬はおとなしくて賢い犬だから、
あの山伏に祈られたところで、何の影響もないだろう。」
(アト = 出家)
「それなら、ぜひ祈ってもらおう。犬を連れてきてください。」
(サカイテ = 仲裁者)
「心得ました。さあさあ、御山伏、祈ってください!」
(シテ = 山伏)
「よし、今こそ目に物見せてやろう! しっかり犬を押さえておけ!」
(サカイテ)
「心得ました。」
(シテ = 山伏)
「そもそも山伏とは、山に住むからこそ山伏と呼ばれるのだ。
法衣を黒く染め、杖を持ち、珠数(じゅず)をつなぎ合わせ、
祈るための正式な道具を持っている。
ゆえに、私が祈れば、当然その力が発揮されるはず!」
(山伏が祈り始める)
(シテ = 山伏)
「ほうろうん、ほうろうん、ほうろうん……!」
(しかし、犬は全く反応せず、笑いものになる)
(サカイテ)
「さあさあ、今度は出家に祈らせてみよう。」
(シテ = 山伏)
「心得ました……。」
