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- 現代語訳
「6
させません。とかく。其様にいふては。埒か明ぬに依之。
あにそ。行くらべを被成。勝ち負けに依て。理非
シテ
せこけませら。は◦成程行こらへをしう、何をせらそ、
さかいて
某か人喰犬を持て居りまする。これをいのら
しまして。かちまけに依て。理服を分ませう。
シテ
◦いや〳〵なん方のものもいのつこか、いぬをいのつた事
さかいて
かない、てもこなたは最前下飛鳥をいのりおとすと。
おしやつた。いのらしられねは。こなたのまけ
シテ さかいて
いて御座る。◦まけしや、中〳〵。それならい
さかいて
いのろう、犬を引列出せい、心得ました。のう〳〵
御出家。とかく此様にいふては。場か明ぬ程に。何にそ。
行こらへをさせまして。勝まけに依て。理非をら
アト
ませうそ。扨申聞て被下ましい。ものを物をいのるは
山伏の役め〳〵御座る。私は出家の事なれはなりませまい。
「6
(サカイテ = 仲裁者)
「どうにも話が進まないようなので、勝負をして決めてはどうでしょうか?
勝敗によって、どちらが正しいかをはっきりさせましょう。」
(シテ = 山伏)
「なるほど、勝負をしよう。で、何をするのだ?」
(サカイテ)
「私が飼っている人食い犬がいます。その犬をお祈りで制していただきましょう。
もし犬を祈り伏せることができれば勝ち、できなければ負けとします。」
(シテ = 山伏)
「いやいや、それはおかしい。私はこれまでに犬を祈ったことがない!」
(サカイテ)
「ですが、先ほどあなたは『鳥を祈り落とせる』とおっしゃいましたよね?
もし犬を祈り伏せられないのなら、あなたの負けですよ。」
(シテ = 山伏)
「……負けた!」
(サカイテ)
「いやいや、そう簡単に負けを認めないでください。」
(シテ = 山伏)
「わかった、祈ろう! その犬をここへ連れてこい!」
(サカイテ)
「心得ました。さてさて、出家よ。
どうにも話が進まないので、勝負をして決めることにした。どう思う?」
(アト = 出家)
「よくお聞きください。
ものを祈るのは山伏の務めです。私は出家なので、そのようなことはできません!」
