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- 現代語訳
「3
〔欠〕テ アト
◦扨御出家は何国よりいつかたへ御座るそ、私は
はるか遠国の出家て御座る。此度。都見物の
シテ
ために登りまする。さかておろう、扨
アト
出家に尋る事が有る、夫は(ルビ:夫はいが様なることて御座り)か様なることて御座り
シテ
まする(ルビ:まする)。出家は魚はい〳〵度くうたそ、はて扨。
爰な人は出家の魚くと云事のおるそ其様
シテ
〔欠〕すは好ません。◦いや〳〵わこりうはとねても
こ〔欠〕な出家じや、たいかすきか、蛸(ルビ:たこう)か数寄か、
アト終に
つひにこりて見た事かないに詰て。とれか
シテ
すきと申事も御座らぬ(ルビ:すきと申事も御座らぬ)。◦いや己しかと云をる
アト
まいか、はあ申ませう〳〵。いく度こうた、
アト シテ
弐三度被下ました。◦さうてわろう、又女房は
アト
いくたり御梅やつた、屋わうこゝる人は。出家の
女房を持つと云ことの御座るは。其様なことは
「3
(シテ)
「さて、お前(出家)はどこの国から来たのだ?」
(アト)
「私は遠い国の出家でございます。このたび都を見物するために上ってまいりました。」
(シテ)
「なるほど。それはそれとして、出家に尋ねたいことがある。」
(アト)
「それは一体、どのようなことでしょうか?」
(シテ)
「出家は魚を食べるのか?」
(アト)
「そんなことは好みません。」
(シテ)
「いやいや、そうは言っても、どうなのだ? 出家はたい(鯛)が好きか、蛸(たこ)が好きか?」
(アト)
「いや、私はこれまで一度もそのようなことを試したことがありません。だから、何が好きかなど分かりません。」
(シテ)
「いや、確かにお前は食べたことがあるだろう?」
(アト)
「はあ……では、申しましょう。」
(シテ)
「何度食べたことがあるのか?」
(アト)
「二、三度ほどいただいたことがあります。」
(シテ)
「それはいけないことだ。また、お前には女房(妻)は何人いたのか?」
(アト)
「いやいや、出家が女房を持つなどということがあるでしょうか? そんなことは私は知りません。」
