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- 現代語訳
「7
何んとし之爰へ来た知らぬ迄、身共か長刀の
見ぬが仮染に出るにも、長刀をわするくも
てはないか刀もなし、はてぬてんなゆらぬ事しや
是は何んしや、唐笠又爰にひよんなへりのあり
有、是は何んと云ものやらしうぬ迄、はあ今
思ひ出ゝした、是は禅宗なとのこうして、ざせん
〔欠〕をめさるゝじうとと云ものしや
〔欠〕が有ん此様なものが爰にある筈しや
ないが、何んとしらしらぬ迄、はあ、今思ひいた〳〵、
最前、夢心の様に、旅の出家を同道したと思やか、
釈迦か達摩かし、へんしさせられ(ルビ:り)て、身ともか
日比酒を呑のては酔狂をし、悪きやくいたすに
依之、仏道へ、引入んが為に、此様なものを
授(ルビ:サツ)けさせられた、ものてあろう、此なりで
「8
屋敷御帰られはせまい、これから直に、諸国語行に
出ろてあろ迄、はあ思ひもよらぬ諸行を致
シテ
すことで御座る、◦思ひよらすのとんせや〳〵
小袖にがひら衣を着、刀にかいた此珠能を〳〵、
長刀にかいし、唐笠をかたけては、たにいちやう
よ〳〵、あんきやの増に出わつちは御座らぬか、わつ
〔欠〕、〳〵〳〵〳〵〳〵
(半丁白紙)
「7
「なんということだ、ここへ来たのも知らぬうちに、私の長刀が見当たらないではないか。たとえ仮染(かりそめ)に出かけるとしても、長刀を忘れることなどあるはずがない。刀がないとは、これは一体どうしたことか。」
「これは何だ? 唐笠(からかさ)がまたここにひょいと置かれている。これは一体何というものなのか、わからないな……。」
「はあ、今思い出した! これは禅宗などで、このように座禅を組むときに用いる『坐禅』のためのものではないか? そんなものがここにあるはずはないのだが……。一体どうしたことだ?」
「はあ、今やっと思い至った。さっきのことが夢心地のようだったが、旅の出家を連れていたと思ったら、もしかして釈迦や達磨(だるま)に化かされてしまったのか?」
「いや、そうではなくて、私はいつも酒を飲んで酔狂なことばかりし、悪事を働いていた。だから、それを戒めて仏道へ導くために、こんなものを授けられたのではないか?」
