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「3
            アト
かまへたがはやかろうか、私は出家の事て御座りば。
               シテ
どれは早かろうもそんしません。◦いや知らぬと
云ハおすと云事であろう、おすいか早いかさらは
     アト
参ろさう、はあ。いよう御座りませう〳〵。
シテ
◦いや己はにくいやつの、其雨笠て請たそ、此長刀の
きれまいと云事てあろう、切れぬか切るまいか
       アト
〔欠〕らは参ろう、はあ切ませう〳〵。
シ〔欠〕 アト      シテ
〔欠〕切りう、切ませう〳〵。◦切りう、
アト    シテ
切ませう。◦笑是もされもしや、気にれう
      アト
きやるな、こいい御それ事て御座りませう。
シテ    アト
◦御坊〳〵、はあ。◦身共はゆうたふとに、手残を引て
      アト    シテ   アト
おこりやれ、心得ました◦御坊〳〵、はあ。
 シテ
◦此先に身共か、知つた茶屋がある、是へ参なり
                アト
一飯(のを見せ消ち)を呑申さう、是は有難御座りまする。

「3
(アト)
「私は出家の身ですので、どれが早いかは存じません。」
(シテ)
「いやいや、知らぬというのは押すのが早いのか、引くのが早いのか、
試してみようということだ。」
(アト)
「はあ、それは結構なことですね。」
(シテ)
「いや、お前はなかなか憎いやつだな。
その笠で受け止めるつもりか? それともこの長刀の切れ味を試す気か?
切れるのか切れないのか、試してみよう。」
(アト)
「はい、それでは切ってみましょう。」
(シテ)
「本当に切るのか?」
(アト)
「切ってみましょう。」
(シテ)
「切るのか?」
(アト)
「切ってみます。」
(シテ)
(笑いながら)「まあまあ、そんなことは気にするな。」
(アト)
「これは何か恐ろしいことになりそうですね。」
(シテ)
「おい、僧よ。」
(アト)
「はい。」
(シテ)
「お前が言うなら、手を引いてここから出て行こう。」
(アト)
「承知しました。」
(シテ)
「おい、僧よ。」
(アト)
「はい。」
(シテ)
「この先に、私の知っている茶屋がある。
そこへ行って、一杯飲もうじゃないか。」
(アト)
「それはありがたいお話ですね。
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