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- 現代語訳
「1
悪坊
〔欠〕ト
是は。西近江より東近江へ諸用あつて参る。先そろ
う〳〵と参ろう。誠に出家程楽なしは御座ら。
ぬ。唐笠三本さへ御座れは。何方え参いる。皆人
の御池花を被成に依之。中〳〵面白事て御座る。
是は如何な事。にが〳〵しい断へ出今着弐。何とせうしうん。
〔欠〕シテ
牛代に殿達とつくらぬ面白しを牛代とつくら欠
シテ シテ アト
笑曰うたふとに面白事はない、御坊〳〵、はあこちの
事て御座りまするが。。中〳〵わこりいとれから
アト
とれへ御行やる。私は西近江より。東近へ諸用有
て参りまするが。何そ御用てばし御座りまするが。
シテ
◦何んしや西近江が東近江へになつた、
アト シテ
いや西近江より。東近江へ参りまする。むゝかてんしや、
アト シテ
西近江から東近江からこる、はあ。御供申さう、
「1オ
悪坊
(アト)
「これは、西近江から東近江へ用事があって向かうところだ。まずは、さっさと行くとしよう。
まったく、出家ほど気楽なものはないなあ。唐笠が三本あれば、それで十分だ。どこへ行っても、皆が池の花を眺めている。なかなか風情があって面白いものだ。
これはどうしたことか。厄介なことに巻き込まれそうな気がする。どうしたものか。」
(シテ)
「牛代(田の賃料)のことを話しているが、それほど面白いものではないぞ。」
(アト)
「はあ、それはそうですが……。」
(シテ)
「まあまあ、のんびり行くとしよう。」
(アト)
「私は西近江から東近江へ用事があって向かいますが、何かご用でもございますか?」
(シテ)
「なんだって? 西近江が東近江になっただと?」
(アト)
「いやいや、西近江から東近江へ向かっているだけです。」
(シテ)
「ふむ、理解しがたいな。西近江から東近江へ行くのか、東近江から戻るのか、どっちだ?」
(アト)
「はい。」
(シテ)
「よし、私もお供しよう。
